新型レクサスISを徹底解説【デザイン・価格・発売時期】とFRの誇り

レクサスはSUVが主流となる時代にあっても、スポーツセダン「IS」の継続を正式に発表しました。1999年の初代登場以来、FRレイアウトがもたらす操縦性と洗練されたデザインで多くのファンを魅了してきたISは、ブランドを象徴する存在として根強い人気を保っています。2025年秋に発表され、2026年初頭から市場導入される新型ISは、外観デザインや内装の刷新に加え、電動化パワートレインの導入も視野に入れた進化を遂げます。価格帯やサイズ、走行性能、そして競合モデルとの比較を整理しながら、新型ISがなぜ今もセダンとして存在感を示すのか、その意味を紐解いていきます。

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レクサスISが継続発表された背景

レクサスISは登場して以来、ブランドを代表するスポーツセダンとして位置づけられてきました。高級セダン市場がSUVに押される中でも、FRレイアウトの持つ操縦性とスポーティなデザインが多くのファンに支持されてきました。トヨタ/レクサスのセダン戦略において、ISはミドルサイズの中核を担い、上位のGSや下位のHSが消えた後もブランドの個性を体現する存在であり続けています。

近年は世界的にSUVシフトが進み、レクサスでもNXやRXといったSUVが販売の柱になっています。その一方で、セダン需要が完全に消えたわけではなく、特に北米市場やアジア市場ではスポーツセダンのファン層が一定数存在します。こうした背景からレクサスは、SUVが主流の時代にあってもセダンを継続し、多様な顧客層に応えるブランド戦略を取っています。

ISはブランドアイコンとしても重要な意味を持ちます。FRプラットフォームを活かした走りの良さは、レクサスが掲げる「Lexus Driving Signature」を象徴するものであり、エントリー層が初めて体験するスポーツセダンとしての役割も担っています。継続発表は、単なるモデル存続の意味だけではなく、電動化時代においても「走りを楽しむレクサス」を示す決意の表れだといえます。

発売時期はいつ?

新型レクサスISは、2025年秋から2026年初頭にかけての発売が計画されています。現行モデルは2020年に大幅な改良を受けており、その刷新から6年が経過するタイミングで新たなモデルサイクルに入ることになります。これまでの経緯を踏まえると、今回の発表は単なる小規模な改良ではなく、プラットフォームやデザインを含めた本格的な更新になることが示されています。

導入スケジュールは市場によって異なります。日本市場では2025年内に正式発表が行われ、2026年初頭から販売開始となる見込みです。北米市場においても同時期の導入が計画されており、従来の販売規模を維持しつつ新しい顧客層への訴求が意識されています。欧州市場では電動化の要請が強いため、ガソリンモデルの展開は限定的になる可能性があり、ハイブリッドを中心としたラインアップが展開されます。

この発売時期は、レクサスが掲げる電動化ロードマップとも連動しています。2030年以降は主要市場でのBEVシフトが加速することが見込まれており、ISの新型投入はその過渡期を支える戦略モデルとして重要な意味を持っています。

外観デザインは?(現行ISの要点と次期像)

現行レクサスISは、スピンドルグリルを中心とした力強いフロントフェイスと、低く構えたプロポーションが大きな特徴です。ワイド感を強調するデザインとシャープなヘッドライトは、スポーティさと上質感を両立させ、ミドルセダンとして独自の存在感を放っています。また、リヤは横一文字のテールランプを採用し、近年のレクサスデザインの流れを先取りしたスタイルを確立しています。

次期モデルでは、この「スピンドルグリル」から「スピンドルボディ」へと進化するデザイン言語が採用される予定です。フロントまわりだけでなくボディ全体の造形にスピンドルのモチーフを組み込み、より自然で流麗な一体感を持たせるのが特徴です。ヘッドライトは現行よりもさらにシャープな形状になり、空力性能を高める工夫も盛り込まれています。

デザインキーワードは「スポーティ」「先進性」「空力性能」の三本柱です。低重心とワイドスタンスをさらに強調しながら、電動化を見据えたシンプルでクリーンな造形へ移行することが明らかになっています。これにより、従来のFRスポーツセダンらしい迫力を残しつつ、未来志向のイメージを打ち出すデザインが実現されます。

内装は?(質感×HMIの進化軸)

現行レクサスISの内装は、上質な素材使いとドライバーを中心に設計されたコクピットレイアウトが特徴です。運転席周りは包み込むようなデザインで、視線移動が少なく操作できる配置になっています。ステアリングやシフトノブには本革が使われ、シートも高級感とホールド性を両立しています。また、オーディオにはマークレビンソンの高性能システムを設定でき、ドライバー志向と快適性を高いレベルで両立してきました。

インフォテインメントについては、2020年の改良時にタッチディスプレイが採用され、Apple CarPlayやAndroid Autoにも対応しました。しかし競合モデルに比べると画面サイズや操作性の面で物足りなさを指摘する声もありました。そのため次期モデルでは、大型モニターや最新のHMI(ヒューマンマシンインターフェース)の導入が注目されています。

さらに、ソフトウェアの進化に対応するためOTA(Over The Air)更新機能を標準化する流れが進んでおり、車両購入後もシステムを最新の状態に保てるようになります。快適性の面ではシートの電動調整や温冷機能に加え、デジタル化とのバランスが重視されます。物理スイッチを残しながらデジタル操作を強化する方向性は、レクサスらしい高級感と安心感を保ちながら新しい時代に対応する取り組みといえます。

何人乗り?サイズは?(主要諸元で比較)

現行レクサスISは5人乗りのセダンで、全長4,710mm、全幅1,840mm、全高1,435mm、ホイールベース2,800mmというサイズを持っています。この数値はBMW 3シリーズやメルセデスCクラスとほぼ同等で、欧州プレミアムセダンの王道サイズに属しています。車幅はややワイドでありながら、全長は抑えられているため取り回しの良さを確保しています。

BMW 3シリーズ(全長4,715mm、全幅1,825mm前後)やメルセデスCクラス(全長4,755mm、全幅1,820mm前後)と比較すると、ISは全幅でやや広く、ホイールベースは同等です。後席空間は競合と同レベルですが、居住性の評価はシート形状や頭上空間の制約によりややタイトと感じるユーザーもいます。

新型については正式な数値は未発表ですが、現行モデルのサイズ感を大きく変えることは想定されていません。ミドルセダンとしてのバランスを維持しながら、居住性や後席の快適性を高める工夫が盛り込まれるとされています。ホイールベースをわずかに延長し、後席の足元空間を改善する可能性が検討されており、ライバルと同水準の使いやすさを維持することが重要視されています。主要諸元の比較から見ても、ISはこのクラスの標準的なサイズであり、都市部での走行や駐車にも適した実用性を持っています。

荷室は?

現行レクサスISのトランク容量は約480リットルであり、ミドルサイズセダンとして標準的な数値です。ゴルフバッグを2つ積載できる程度の容量を確保しており、日常の買い物や旅行にも十分対応できる実用性を持っています。後席を倒すことで長尺物の積載も可能となり、セダンとしては柔軟な使い方ができるのも特徴です。

ライバル車と比較すると、BMW 3シリーズは480リットル前後、メルセデスCクラスは455リットル程度であり、ISの容量は同等かやや優れた数値といえます。ただし、開口部の形状や奥行きの関係で積み込みやすさは車種ごとに違いがあり、実用感は実際の利用シーンによって評価が分かれます。

新型モデルでは電動化の影響を受ける可能性があります。ハイブリッドや将来的なBEVモデルではバッテリーの配置が課題となり、荷室容量が制約を受ける場合があります。レクサスはユーザーの実用性を重視する姿勢を取っており、床下スペースの工夫やシートアレンジで使いやすさを確保する方針です。荷室はセダン選びの大切な要素であり、次期ISでも競合と遜色ない実用性を維持することが期待されています。

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パワートレイン(次期の電動化)

現行レクサスISのパワートレインは、2.0リッター直列4気筒ターボ、3.5リッターV6、そして2.5リッターハイブリッドの3種類が用意されています。これにより、スポーティさを求める層から経済性を重視する層まで幅広く対応してきました。特にハイブリッドモデルは低燃費と静粛性を兼ね備え、日本市場を中心に高い支持を得ています。一方で、V6モデルは北米市場などで走行性能を重視するユーザーから評価されてきました。

次期モデルについては、レクサスが掲げる電動化方針に沿ってパワートレインの刷新が進められます。すでにレクサスは2030年までに主要市場でBEV中心の展開を行うことを表明しており、ISもその流れの中で位置づけられます。ガソリンとハイブリッドは当面継続されるものの、PHEVの導入や完全なBEVモデルの展開が計画に含まれることが示されています。

FRスポーツとしての魅力と電動化の両立は課題となります。従来のエンジン搭載モデルが持つフィーリングを維持しながら、モーターの力強い加速特性をどう融合させるかがポイントです。レクサスはドライバーの感性に応える走りを重要視しており、パワートレインの選択肢を通じてブランドの個性を守る方針を示しています。

走りはどうなる?(FRスポーツ→電動化の乗り味)

現行レクサスISはFRレイアウトを採用し、優れたハンドリング性能と高いボディ剛性で評価されています。2020年の改良で車体剛性が強化され、ステアリングレスポンスや安定性が向上しました。ワインディングロードでの俊敏な動きや、高速道路での安定感は現行モデルの大きな魅力であり、ドライバーから高い満足度を得ています。

次期モデルでは、このFRスポーツの特性を維持しつつ、電動化による新しい走りの価値が加わります。すでにレクサスはDIRECT4と呼ばれる四輪駆動システムを発表しており、モーター駆動によって前後の駆動力を自在にコントロールする技術を備えています。これにより、高い直進安定性とコーナリング性能の両立が可能になります。また、ステアバイワイヤの導入も進められており、ドライバーと車両の一体感を高める仕組みが取り入れられています。

FRスポーツとしての走りと電動化の融合は、単に動力源が変わるだけでなく、制御技術の進化によって新しい体験を提供します。従来のエンジンが生むレスポンスに代わり、モーターによる即応性が加わり、より直感的なドライビングが実現されます。これにより、ISは電動化時代においてもスポーツセダンとしての存在感を維持し続けることが期待されます。

乗り心地は?(現行評価軸とBEV時代の指標)

現行レクサスISの乗り心地は、しなやかなサスペンションセッティングと高い静粛性で高く評価されています。スポーツセダンでありながら日常走行でも快適さを損なわず、ドライバーと同乗者の双方が満足できるバランスを持っています。遮音材やボディ構造の工夫により、風切り音やロードノイズも抑えられており、上質な走行感覚が実現されています。

BEV時代に入ると、乗り心地の評価軸はさらに変化します。モーター駆動によってエンジン音が消えるため、車内の静粛性は一段と向上します。その一方で、大容量バッテリーを搭載することで車両重量が増加し、サスペンションの制御や路面追従性がより重要になります。レクサスはすでに他のBEVモデルで高精度な制御技術を導入しており、ISにおいても重量増を感じさせない乗り心地を実現する取り組みが進められています。

ライバルのBEVセダンと比較しても、乗り心地の快適性は差別化の要素となります。テスラModel 3は鋭い加速性能に注目が集まりますが、静粛性や細かな乗り味のチューニングでは日本ブランドが強みを持っています。ISもBEV時代において、単なる静かさにとどまらず、上質で疲れにくい乗り心地を提供することが求められます。快適性とスポーティさを両立することが、次期モデルに課された大きな使命といえます。

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価格は?(現行価格レンジと次期の目線)

現行レクサスISの価格帯はおおよそ500万円から700万円の範囲に収まっています。ベースモデルのIS300が約500万円台からスタートし、ハイブリッド仕様のIS300hや上級グレードのIS350 F SPORTになると600万円台後半に達します。この価格設定はBMW 3シリーズやメルセデスCクラスと同等の水準であり、プレミアムセダン市場において直接的な競争関係を築いています。装備や内装の質感を考慮すると、価格に見合うバリューを提供しているという評価が定着しています。

次期モデルでは、電動化の流れに沿ってPHEVやBEVが導入される可能性が高まっています。電動化モデルはバッテリーコストや新しい制御技術を採用することで製造コストが増加する傾向にあり、価格レンジが上昇することが想定されます。レクサスは従来から装備を充実させる戦略をとってきたため、今後も価格は上昇しながらも競合に対して遜色のない設定となる見込みです。

購入時には単純な車両価格だけでなく、維持費や燃費性能も含めたトータルコストに注目する必要があります。競合車種のPHEVやBEVと比較しても、価格と性能のバランスが重要な判断材料となります。レクサスISはブランドの信頼性やリセールバリューを含めた「値ごろ感」が強みとなっており、購入検討時にはその点が評価されやすいといえます。

競合他車は?

レクサスISが属するプレミアムミドルセダン市場には、強力な競合が存在します。代表的なモデルとしてBMW 3シリーズ、メルセデスCクラス、そしてテスラModel 3が挙げられます。いずれも世界的に販売実績を持ち、セグメントをけん引する存在です。

BMW 3シリーズはFRプラットフォームをベースにし、ガソリン、ディーゼル、PHEVと幅広いパワートレインを備えています。走行性能と操縦安定性に優れ、スポーティセダンの代名詞ともいえるモデルです。これに対しレクサスISは、静粛性や上質感に重点を置き、信頼性の高さで差別化しています。

メルセデスCクラスは快適性とラグジュアリー性が強みであり、最新の安全技術やインテリアの質感が高い評価を受けています。レクサスISは品質の安定性や価格のバランスで対抗し、保有コストの面で優位性を示す傾向があります。

テスラModel 3は完全BEVとして登場し、加速性能と先進的なインターフェースで注目を集めています。ただし車両品質や内装の質感では改善の余地があるとされており、ISは従来型セダンらしい作り込みで競争力を維持しています。こうした比較から、ISは信頼性や品質の高さを武器に競合と異なる魅力を提供していることがわかります。

購入・乗り換え戦略(2025年〜2026年)

レクサスISを検討するユーザーにとって、2025年から2026年にかけての購入戦略は重要です。現行モデルを2025年内に購入するメリットは、価格の安定と納期の確保にあります。すでに熟成されたモデルであるため品質が安定し、実績あるパワートレインを安心して選ぶことができます。また、現行モデルの在庫やキャンペーンによって価格条件が有利になるケースもあり、費用対効果を重視する場合には適した選択といえます。

一方で2026年の新型を待つメリットは、最新の技術や装備を手に入れられる点にあります。大型ディスプレイやOTA対応のインフォテインメント、新しい電動化パワートレインなどは、旧型にはない価値を提供します。加えて新型は今後の規制や環境基準に対応しているため、長期的に見た時の所有価値も高いと考えられます。

中古市場やリセールバリューを考慮すると、フルモデルチェンジ直前の旧型は価格が下がる傾向にありますが、レクサスブランドはもともと残価率が高く、市場で安定した評価を受けています。そのため短期間での乗り換えや長期所有のどちらにも対応できる強みを持っています。購入戦略を考える際には、自分が重視するポイントが「即時の価格メリット」なのか「将来的な最新技術」なのかを整理し、最適なタイミングを見極めることが大切です。

ISを選ぶべき人は?|ターゲット層の整理

レクサスISは、走りと上質さを兼ね備えたスポーツセダンとして、明確なターゲット層を持っています。まず挙げられるのは走りを楽しみたい層です。FRレイアウトによる後輪駆動特有の操縦性や高いボディ剛性は、ドライバーが思い通りに操作する感覚を味わえるものであり、ドイツ車に匹敵するスポーティさを求める人に適しています。

次にラグジュアリー志向の層です。内装の質感や静粛性は、BMWやメルセデスのような華やかさとは異なり、落ち着いた上質感を持っています。過度な派手さを好まない層にとっては、洗練されたバランスが魅力となります。また、レクサスは信頼性と品質の高さで知られており、長期的な維持コストやリセールバリューを重視する層にも支持されています。

さらに、電動化に備えたい層にとっても選択肢となります。次期モデルではPHEVやBEVの導入が進められるため、環境性能と走行性能を両立させたい層にとって魅力的な選択肢となります。ファミリーユースとしても5人乗りの実用性があり、日常的な利用にも対応可能です。ただし荷室や後席空間はライフスタイルに応じた見極めが必要となります。こうした多面的な特徴を備えることで、ISは幅広いユーザーに訴求できるモデルとして位置づけられます。

Q&A

Q:新型ISの発売は確定していますか?
A:レクサスは2025年9月に新型ISを公開しており、2026年初頭から順次市場投入される予定です。公式発表に基づき、発売は確定しています。

Q:現行のサイズや乗車定員はどうなっていますか?
A:現行ISは全長4,710mm、全幅1,840mm、全高1,435mm、ホイールベース2,800mmのボディサイズを持ち、5人乗りとなっています。BMW 3シリーズやメルセデスCクラスと同等のサイズ感です。

Q:荷室は狭いのでしょうか?
A:現行モデルのトランク容量は約480リットルで、ゴルフバッグ2個を積載できる実用性があります。競合車と比較しても同等水準であり、狭いという評価には当たりません。

Q:価格の目安はどのくらいですか?
A:現行ISは約500万円から700万円のレンジに設定されています。次期モデルは電動化技術の導入により価格上昇が見込まれますが、同クラスの競合車と同水準に収まる見通しです。

まとめ|新型ISが示す「継続の意味」

レクサスISが次期モデルの継続を発表したことは、単なるモデル存続の決定にとどまりません。セダン市場が縮小する中で、FRスポーツセダンを存続させることはブランドの姿勢を示す重要なメッセージです。SUVが主流となる一方で、スポーツセダンには根強い支持層が存在し、その存在感を再確認することにつながります。

電動化の時代においても、ISはFRレイアウトが持つ操縦性を活かしながら、新しいパワートレインを組み合わせることで価値を維持します。これは単なる環境対応ではなく、ドライバーにとっての走りの楽しさを守る姿勢を意味します。さらに、上質なインテリアや高い信頼性といったレクサスならではの特長も進化を続け、10年先を見据えたセダン像を提示します。

新型ISは、スポーティさとラグジュアリーの両立、そして電動化との融合を体現する存在となります。その継続は、次の10年におけるレクサスの回答であり、セダンが持つ価値を改めて示すものです。ISはこれからもプレミアムセダンの中で確固たる地位を築き続けることになります。

あとがき|新型レクサスISと世界のスポーツセダン文化をめぐって

新型レクサスISが登場するというニュースは、日本国内だけでなく、グローバルな自動車市場においても注目を集めています。SUV全盛の時代にあって「セダンをまだ続けるのか」という声もあれば、「よくぞ残してくれた」という安堵の声もあります。どちらにせよ、FRスポーツセダンというフォーマットが今もなお自動車文化の一角を担っている証左であり、それをレクサスが守り抜こうとしていることに価値があります。

FRセダンという形式は20世紀の欧州プレミアムブランドが築いた伝統に由来します。メルセデス・ベンツの190シリーズやBMWの3シリーズが世界中の若者に「いつかは手に入れたい」と思わせた原点であり、日本からはトヨタのアルテッツァ、つまり初代ISがその系譜に挑戦しました。奇しくもアルテッツァの発売は1998年、BMW E46やメルセデスW203と同時代でした。あの頃のカタログを開くと、後輪駆動の伸びやかなボディと6気筒エンジンが、これこそスポーツセダンだと誇らしげに語られていました。

ISの継続は決して簡単な決定ではありませんでした。SUV人気が急速に拡大する中で販売台数のシェアは縮小傾向にあり、社内では「ISはもう役割を終えたのでは」という議論もあったと伝わります。しかしエンジニアたちは「走りを楽しむレクサスの魂」を残す必要があると主張し、存続が決まったのです。彼らにとってISは単なる商品ではなく、自分たちの誇りそのものでした。

アメリカの自動車ファンの間では「SUVは家族のために買う車、セダンは自分のために買う車」と冗談交じりに言われます。つまり、家族サービスと自己満足のせめぎ合いが、駐車場のラインに並ぶ二台の車に表れているというわけです。その対比の中で、ISは「家族にも理解してもらえる自分の趣味の車」として絶妙なポジションを築いてきました。

スポーツセダン市場は縮小しながらも依然として存在感を放っています。欧州では依然としてBMW 3シリーズがベンチマークとされ、中国市場でもプレミアムセダンの需要は堅調です。北米ではSUVに押されながらも、ドライバーズカーを求める層が一定数存在します。つまりISの継続は、地域ごとに異なる需要を結び合わせた戦略的判断でもあります。

ISのボディ剛性向上にかけられた執念です。現行型の改良では、ボディに補強材を追加するためにエンジニアが「あと1mmでも剛性を上げたい」と議論を重ね、最終的に通常の溶接点を増やすという地道な手法に落ち着きました。最先端の新素材や派手な技術ではなく、徹底した作り込みがISらしい進化を生んでいます。こうした地道な努力はユーザーからは見えにくいですが、試乗したときの「安心感」や「操縦性の自然さ」として実感できる部分です。

また、日本市場ならではの事情もあります。セダン需要が減少する一方で、タクシーや公用車の多くはセダンであり続けました。つまり街の景観には常にセダンが存在し、それが人々の無意識に「車といえばこういう形」という記憶を残しています。その中でISは、単なる移動手段を超えて「セダンの美学」を象徴する存在であり、実際に街角で見かけたときに心が動くような車です。

セダンは国ごとに呼び方もイメージも異なります。欧州では「サルーン」、北米では「セダン」と呼ばれ、日本では「普通車」という言葉に含まれる形でした。言葉の違いは文化の違いを映し出しており、セダンは単なる形式ではなく社会的役割を背負ってきたのです。フォーマルな場に乗りつける車としての象徴性もまた、セダンが持つ魅力の一部といえます。

電動化時代に向けた挑戦も忘れてはなりません。レクサスはすでにBEVコンセプトのLF-ZCを発表しており、次期ISもその技術的流れを受け継ぐことになります。モーターの瞬発力や静粛性を取り込みながらも、FRの操縦性をどうやって残すかが最大の課題です。ここにエンジニアたちの工夫と知恵が注がれています。走行用モーターの配置やバッテリーの搭載位置を試行錯誤し、まるで「将棋の駒をどう置けば最強の布陣になるか」を考えるように設計が進められました。

国際市場の競合とも比較してみましょう。BMW 3シリーズは伝統的に走りを重視し、最新世代では48Vマイルドハイブリッドを導入しています。メルセデスCクラスは快適性とデザイン性で強みを発揮し、テスラModel 3はEV専用設計による加速性能で市場を驚かせました。それぞれが異なる魅力を持つ中で、ISは信頼性や造り込みの丁寧さで差別化を図っています。とりわけ長期所有を重視するユーザーにとって、故障の少なさやリセールバリューの高さは他に代えがたい要素です。

開発チームは各地域でのテストにも工夫を凝らしました。欧州の石畳の路面、アメリカの広大なフリーウェイ、日本の山岳道路など、異なる条件で試験走行を繰り返し、どの市場でも「自然な走り」を感じられるよう調整しました。エンジニアの一人は「ドライバーが車の違和感を指摘しないことが最高の褒め言葉」と語り、その信念がISの走行フィールに結実しています。

ある海外ジャーナリストは「SUVは山を登るが、セダンは心を登らせる」と評しました。確かにISに乗ると、目的地に着く前にドライビングそのものが小さな冒険になる感覚があります。また、別の記者は「ISはビジネスマンのスニーカーだ」と語りました。革靴のようにフォーマルでありながら、履き心地は軽快で一日を支えてくれる存在だという意味です。こうした比喩が飛び出すのは、それだけISが文化的な存在にまで昇華している証拠です。

ISは「将来のクラシックカー」としてコレクターズアイテムになる可能性も秘めています。電動化が進み、セダンがさらに希少になる時代において、FRスポーツセダンの価値はむしろ高まるかもしれません。歴史を振り返れば、トヨタ2000GTや初代ソアラのように、時代を象徴したモデルが後に評価される例は多くあります。ISもまた、そのような車の一つとして語り継がれていく可能性があります。

ある米国のフォーラムでは「SUVを買えば奥さんが喜び、セダンを買えば夫が喜ぶ」と冗談が交わされていました。笑い話に聞こえますが、車選びの本質を突いています。家族のための実用性と、自分自身の満足感、その二つをどうバランスさせるかは普遍的なテーマです。ISはその狭間に立ち、双方を納得させる解答を提示し続けてきたのです。

新型ISが示す「継続の意味」は、単にモデルラインナップを維持することではなく、自動車文化の多様性を守ることにあります。SUVやBEVが主流になる中でも、FRセダンが存在することで選択肢が広がり、車好きの楽しみが失われないことに意義があります。レクサスがこの領域を守り抜くことは、世界中のファンにとって「まだセダンを楽しめる」という希望を与えてくれるのです。

こうして見ていくと、ISは単なる自動車の一モデルではなく、時代の移り変わりを映す鏡であり、またブランド哲学を体現する存在です。10年後の未来に「なぜまだセダンが走っているのか」と問われたとき、その答えの一つにISの名前が挙がるでしょう。それは開発者の努力とファンの支持があって初めて成り立つものであり、だからこそこのモデルの存続は特別な意味を持ちます。新型ISが走り出すとき、そこには過去と未来をつなぐレクサスの意志が込められているのです。

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